日本人が喋る英語って、癖がありますよね。
ああ、日本人が喋っているなと、すぐにわかります。
もちろんネイティブの人のように、流暢な英語を喋る人もいます。
でも、多くの人が日本語の発音を英語に持ち込んでしまい、日本語的な英語になってしまいます。
それと同じように、外国の人が日本語を話す場合、母国語の癖で変わった日本語になる場合があります。
ロシアの人にも母国語の癖があって、日本語を喋る時に、ちょっと変わった発音になるようです。
人にもよりますが、次の傾向が強いそうです。
① ラ行の音に、巻き舌を使う。
「六百(ろっぴゃく)」が「るろっぴゃく」
「ロシア」が「ルロシア」
「連絡(れんらく)」が「るれんらく」
「よろしく」が「よるろしく」
②「ス」が「ズ」になる。
「~ですが」が「~でずが」
「~ますが」が「~まずが」
③ 長音が不十分。
「どうぞ」が「どぞ」
「ゆうめい」が「ゆめい」
「びょういん」が「びょいん」
④ 長音を間違って挿入する。
「ロシア」が「ローシア」
「一緒(いっしょ)」が「いっしよう」
⑤ 促音「っ」が不十分。
「学校(がっこう)」が「がこう」
「国家(こっか)」が「こか」
「一分(いっぷん)」が「いぷん」
「パニック」が「ぱんにく」
⑥ 強く発音しない「オ」は、「ア」になる。
「お箸(おはし)」が「あはし」
「英語(えいご)」が「えいが」
「友だち(ともだち)」が「たもだち」
⑦ 母音の直前に「ん」があると、ナ行になる。
「千円(せんえん)」が「せんねん」あるいは「せねん」
「禁煙(きんえん)」が「きんねん」あるいは「きねん」
「ワイン売り場」が「ヴァいぬりば」
⑧「う」を口をすぼめて強く発音する。
「靴(くつ)」は「くツゥ」
「かぐや姫(かぐやひめ)」は「かグゥやひめ」
「多分(たぶん)」は「たブゥん」
「肉(にく)」は「にクゥ」
「机(つくえ)」は「ツゥくえ」
⑨「わ」が「ヴァ」になる。
ロシア語には、日本語の「わ」を表す w の発音がないそうです。
それで似ている音として、v の発音になるようです。
「私(わたし)は」が「ヴァたしヴァ」
「わかりました」が「ヴァかりました」
⑩ 助詞を著しく強く発音する。
⑪ 「キャ」「ギュ」「ジョ」などが、「キヤ」「ギユ」「ジヨ」などになる。
「チョコレート」が「チヨコレート」
「京都(きょうと)」が「きよと」
上に書いたもの以外にも、ロシア人特有の癖はあるようですが、主だったものはこんなもののようです。
また、ロシア語は音の高低で言葉を表現するのではなく、音の強弱で表現するようです。
疑問文で「これは何ですか」と尋ねる時、日本人であれば、最後の「か」を上がり調子にしますよね。
ところが、ロシア人の場合、「何」を強く発音し、「か」は上がり調子にならないので、「これは何ですか!」と怒っているように聞こえるようです。
「私はロシア人です」とロシア人が喋る時、「ヴァタァシ ヴァ ロォシアジン デスゥ」
のようになるみたいです。(太字は強く発音)
「デスゥ」は人によっては、「デズゥ」となるのでしょう。
現在は教科書だけでなく、インターネットや映画やアニメなど、外国語を学ぶ機会はいくらでもあります。
ですから昔と比べると、独学ながら流暢な日本語を話す外国の方も少なくありません。それでも、それぞれの母国語の特徴から完全に抜けて、日本語を習得するのは容易なことではないでしょう。
千鶴たちが生きていた時代は、大正時代です。
日本にとってもロシアにとっても、互いの言葉はまだまだ遠い文化であり、それを学ぶ場所も機会も、とても限られていました。
ソ連時代の日本語の教科書も、かなりおかしな日本語が、例文として載せられていたそうですから、今のロシア人の方と比べると、当時のロシア人が喋る日本語は、かなりロシア訛りや誤った言い回しが強いものだったと思われます。
ミハイルやスタニスラフが話す日本語は、とてもわかりにくいものですが、千鶴たちにとっても聞きづらいものだったでしょうから、そこの雰囲気を味わっていただければと思います。