> 前世と催眠術

前世と催眠術

病院でも原因がわからない体調不良を探ってみると、心が深く傷ついたPTSDが原因だったとわかる場合があります。

傷ついたのが最近のことであったり、心に残った出来事であれば、それが原因で調子が悪いのだろうと推測できます。

しかし、幼い頃の体験が原因になっていると、そのこと自体を忘れているということがあります。

その場合、自分では傷ついたつもりがないので、体調不良の原因がわからいままになります。

そんな人に催眠術を用いて、過去の体験を探ってみると、実は昔に深く心を傷つけられていた、という事実が判明するわけです。

その場合、その事実がわかったというだけで、原因不明の体調がよくなるということが少なくありません。

原因がわかったことと、当時と違う今の心では、そのつらい体験を乗り越えられる、ということが理由なのかもしれませんが、本当の所はよくわかっていません。

いずれにしても事実として、催眠術で過去の体験を探ることで、患者の体調不良が改善されるということがあり、これは退行催眠療法と呼ばれています。

ある時、アメリカの精神科医ブライアン・L・ワイス博士が、この退行催眠を使って、患者を症状の原因となる過去へ遡らせました。

すると、その患者が思い出した記憶は、何と前世と思われる人生の記憶だったのです。

それは前世での体験が原因で、今世における体調不良が引き起こされていた、という衝撃の事実でした。

また、今の人生とは異なる人生が、過去に存在していたということ自体、前世を認めていない今のキリスト教社会に生きる人たちにとって、有り得ない話です。

こんな話をすれば、頭がおかしくなったと思われますし、それまで築いたキャリアも吹っ飛んでしまう恐れがあります。

しかし、ブライアン博士はこの経験を隠しておくことができず、我が身の危険を覚悟しながら、本にして公にしました。

これは前世療法と呼ばれ、前世にまで遡った退行催眠療法が、初めて世に紹介されたものです。

1986年にアメリカで出版されたその本は、10年後の1996年に日本でも出版されました。

※日本で出版されたブライアン博士の「前世療法」

ブライアン博士はその後も次々に、前世療法についての本を出版します。

また、他の人たちも前世療法によって得られた知識を本にして、続々と出版するようになりました。

治療というのではなく、単に前世の記憶を探るということで、退行催眠が用いられることも、ぐっと増えました。

一般のマスコミは、この手の情報を取り上げようとしませんが、人間や世界について真剣に考える人にとっては、素晴らしく、また驚くべき情報です。

前世療法によって思い出された過去の記憶が、実際の過去の事実と合わないとして、前世療法による情報をインチキだとか作り話だと、否定する人もいます。

確かに、注目を浴びたいがために、嘘の情報を出す人もいるでしょう。

しかし、だからと言って、ブライアン博士を含めた全ての人の報告が、全て出鱈目だと決めつけるのは、とても乱暴なことだと思います。

その人が体験した世界が、パラレルワールドのものであれば、この世界とは時間軸が違いますから、この世界の過去と事実が合わないとしても、問題ではありません。

そんなことよりも、その情報が明らかにされることで、患者本人の症状が改善されるということが、何より重要です。

症状が改善されたという事実が物語るのは、患者にとっては、その記憶が本当にあったことだということです。

ちなみに、物語の中では井上教諭が千鶴に退行催眠をかけて、前世の記憶を探ります。

これは大正14年(1925年)のことであり、ブライアン博士が前世療法を発見するよりも、約60年も前の話です。