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善勝寺と日切り饅頭

※善勝寺本堂。

善勝寺は伊予鉄道松山駅(現松山市駅)のすぐ北側にあるお寺で、1603年に建立されました。

祀られている地蔵尊は、日切り地蔵として名が知られています。

元禄年間(1688~1704年)に悪疫が流行した時、『善勝寺の地蔵尊に日を切って願を掛けてお参りすれば必ず叶う』との霊夢を見た者が多数現れ、ここの地蔵尊はいつしか日切地蔵または『お日切さん』と呼ばれるようになったと言います。

ちなみに、「日を切る」というのは、期日を定めることで、いついつまでにとか、いついつにと期日を指定してお願いするのを、日を切って願を掛けるといいます。

地蔵盆である毎年8月23日と24日には「日切地蔵まつり」が開催され、今も多くの人で賑わいます。

※中央の竜宮城のような門が、善勝寺の山門。
※松山駅と善勝寺

大正の初め頃、多くの参拝客で賑わう善勝寺の境内に、「ひぎりまんぢう」という焼き菓子が登場しました。

その実態は今川焼きなのですが、「お日切りさん」の境内ですから、「ひぎりまんぢう」という名前になったようです。

今川焼きを饅頭と呼ぶのかと思い、調べてみたところ、饅頭のほとんどは蒸したもので、焼いたものには栗饅頭や唐饅頭などがあると、書かれていました。

やはり、今川焼きを饅頭と呼ぶのは無理があるように思います。

ちなみに、今は「ひぎりまんぢう」ではなく、「日切り焼き」と呼ばれています。

昭和の初め頃は3個5銭で売られていたそうなので、千鶴たちがいた大正末頃も、同じ値段だったと思います。

※ひぎりまんぢうの店と、まんぢうを買った学生たち。