内門から女の声が聞こえ、進之丞と千鶴は声を追いかけます。
奥の内門から進之丞と千鶴が走って来ます。
女は手前の仕切門から外曲輪へ逃げました。
女は向こうの天神櫓の前まで行って、そこで進之丞たちに背を向けたまま立ち止まります。
進之丞たちが追いつくと、般若の面をかぶった女が振り返ります。
つや子や三津子を名乗る、その女の正体は天邪鬼でした。
鬼に変化した進之丞と天邪鬼は、この外曲輪で争います。
天邪鬼は鬼をからかいながら外曲輪を駆け回ります。
また、天邪鬼はやもりのように、大天守の石垣や壁を這い上ります。
鬼と天邪鬼が争っている間に、千鶴は井上教諭を天神櫓の陰へ移動させようとします。
ところが……
天邪鬼に襲われた千鶴を庇って、ここで井上教諭は倒れます。
ついに天邪鬼を捕らえた鬼は、天邪鬼を握り潰したあと、この二ノ門と三ノ門の間の壁に、天邪鬼を投げつけます。
瀕死の状態ながら、尚も生に執着した天邪鬼は、ずるずると這って、この二ノ門から逃げようとします。
門の向こうは下り階段になっており、やがて天邪鬼の姿は見えなくなります。
二ノ門からの階段を這い下りた天邪鬼は、一ノ門を入って来た警官たちと、ここで遭遇します。
天邪鬼を目にした警官たちは、恐怖で大騒ぎになります。
二ノ門の方から警官たちの声が聞こえ、もう逃げられないと千鶴は覚悟を決めます。
鬼は千鶴を抱きかかえると、二ノ門とは反対側にある土塀を振り返ります。
天神櫓の脇にある土塀を、鬼は千鶴を抱いたまま飛び越えました。
土塀の向こう側です。
ここへ飛び降りた鬼と千鶴は、この場所で新たな人物に出会すことになります。
それは千鶴の祖父、甚右衛門でした。